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健康への影響
受動喫煙の安全レベルの存在は見つかっておらず、むしろ安全レベルはないことが示唆されている。 しかも屋内では単なる換気設備などでは受動喫煙を防げない。 喫煙者と同居する非喫煙者の死亡率は有意に上昇することが知られる。 受動喫煙により、危険性が増すとされる代表的な障害を以下に提示する。
受動喫煙が引き起こす障害
小児:
乳幼児の突然死・肺の発育遅延・低出生体重児
学童期の咳・痰・喘鳴・息切れなどの呼吸器症状
急性反復性中耳炎・滲出性中耳炎とその治癒の遅延
小児喘息・他の喘息性疾患・持続する低肺機能
髄膜炎
成人:
心筋梗塞・狭心症・動脈硬化
肺癌
副鼻腔がん
乳がん・胃がん
喘息・気管支炎・肺炎
体臭の悪化・鼻の違和感
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受動喫煙が引き起こすと思われる障害
小児:
早産
小児がん・白血病・脳腫瘍
肺結核・呼吸障害
知能低下
難聴
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
虫歯
虫垂炎・クローン病
アトピー性皮膚炎
低身長
成人:
脳腫瘍・脳卒中
大腸がん・悪性リンパ腫・すい臓がん・膀胱がん
アレルギー性鼻炎の悪化
咳・くしゃみ・胸部圧迫感などの呼吸器症状・慢性の呼吸器症状
肺気腫・肺結核
成人発症の喘息・喘息の症状悪化・喘息による呼吸状態の急激な悪化
COPD
加齢黄斑変性
認知症
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研究の歴史
受動喫煙と肺癌の関係
能動喫煙と肺癌との関係に続き、受動喫煙と肺がんとの関係を嫌煙団体が指摘し始めたのは1981年以降であった。 主流煙・副流煙の性質、受動喫煙で吸収される物質、発癌物質への曝露で見られる定量的な用量効果関係の存在、などの知見から、受動喫煙は発癌のリスクを上昇させると言われてきた。 1992年、米国の環境保護機関(U.S. Environmental Protection Agency、USEPA)は、前年までに発表された疫学論文を検討し、環境たばこ煙(environmental tobacco smoke; ETS)曝露レベルと肺癌リスクの関連について肯定的な報告を行っている。 1997年になると、それまで蓄積された疫学研究に対するメタ分析も発表された。 翌1998年には、英国の「たばこと健康に関する科学委員会」も、それまでの研究結果を再評価し、受動喫煙は肺癌の原因、と結論した。 その後も米国の国立癌研究所などが総括的なレポートを出している。
2001年、米国保健省は配偶者に由来する受動喫煙の影響を報告した。 2006年には、同省は前回の総括検討以降に新たに発表された研究(3つのコホート研究と13の症例対照研究)を加え、地域性(米国・カナダ・欧州・アジア)も含めたさまざまな面から再検討し総括している。
日本国内においては、国際肺癌学会や日本呼吸器学会といった関連学会が、それぞれ2000年、2006年に受動喫煙と肺がんとの関係を肯定する内容の宣言や声明を出している。
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受動喫煙と冠動脈疾患の関係
受動喫煙と冠動脈関連疾患との関係については、1984年に日本およびスコットランドにおいて2件の論文が発表された。 前者は冠動脈疾患による標準化死亡比の上昇を、後者は同じく心筋梗塞の影響を報告したものである。 この2報に続く論文も数報発表されたが、1986年に米国保健省はこれらの論文に対して「事例が少なくデータの安定性を欠くためさらなる研究を要する」と評価した。 受動喫煙の影響を調べる生理学的実験がその後相次ぎ、多くの疫学研究もなされた。 1994年以降、先行研究および過去の事例を評価したメタ分析も行われ、受動喫煙と冠動脈疾患との関連性が示唆されてきたこれらの報告を受け、2001年に米国保健省も両者の関連性を支持する見解を示している。 同省は2006年にも関係を再評価し、受動喫煙は冠動脈疾患のリスクを27%上昇させる原因である、と結論している。 またこれらの報告を受け、2002年には日本循環器学会が「禁煙宣言」を出している。
2001年以降には、受動喫煙が冠動脈疾患を起こす機序を報じる論文が発表されてきた。 それらによれば、環境たばこ煙を受けた血管内皮細胞が血管収縮を起こしてアテロームと血栓を形成することが、冠動脈疾患の発症につながるとされている。
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条約・法令
受動喫煙による健康への悪影響については、流涙、鼻閉、頭痛等の諸症状や呼吸抑制、心拍増加、血管収縮等生理学的反応等に関する知見が示されるとともに、慢性影響として、肺癌や循環器疾患等のリスクの上昇を示す疫学的研究があり、IARC(国際がん研究機関)は、証拠の強さによる発がん性分類において、たばこを、グループ1(グループ1〜4のうち、グループ1は最も強い分類)と分類している。 さらに、受動喫煙により非喫煙妊婦であっても低出生体重児の出産の発生率が上昇するという研究報告があることから、以下の条約や法令により受動喫煙の防止が求められている。
条約
2005年2月27日に発効したWHOのたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(たばこ規制枠組条約)では、受動喫煙の防止が各国の責務として定められている。 この条約については、146カ国が合意し、日本も批准している。
2007年7月4日、第2回締約国会議において「たばこ規制枠組条約第8条とそのガイドライン」の実行を、2010年2月までに行うことが、満場一致で採択された。 これにより、日本を含む締約国は、すみやかに公共の場での受動喫煙防止対策を実施・促進することが約束された。 具体的には、人が集まる場所の全面禁煙化、そうした施設内にいかなる形態の喫煙所も設けないこと(たとえばドアで仕切られていても開ければ煙が漏れる)、違反管理者への罰則を定めることとなっている。
法令等
健康増進法 第二節 受動喫煙の防止 第二十五条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることを言う)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
平成15年4月30日付厚生労働省健康局長通知により、健康増進法第25条に規定された受動喫煙防止に係る措置の具体的な内容及び留意点を示している。
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