条約・法令

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    条例等
    2009年3月24日に可決成立した神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例は地方自治体として最初の条例であり、公共的施設の禁煙、店舗面積100u以上の飲食店又は宴会場は禁煙又は完全分煙の選択を定めた。
    完全分煙を選択した場合の喫煙エリア及び喫煙所への未成年者の立ち入りは、業務に従事する者として未成年者を立ち入らせる場合以外は保護者同伴時を含めて禁止され、未成年者の受動喫煙防止に一歩踏み込んだ配慮がなされた。
    尚、禁煙場所での喫煙は2万円以下の過料、施設管理者義務を守らず県知事の命令に従わない場合、5万円以下の過料の罰則を規定し健康増進法より厳しい規定となる。
     
    日本学術会議の評価及び提言
    受動喫煙がもたらす健康障害については、科学的根拠が希薄であるとの説も唱えられ、論争が行われていたが、2004年には世界保健機関(WHO)及び英国タバコか健康かに関する科学委員会が、2005年には米国カリフォルニア州環境局が、2006年には米国公衆衛生局長が、それぞれに詳細な報告書を発表している。
    また、2007年にバンコクで開催されたたばこ規制枠組条約第2回締約国会議の際に、日本を含め全会一致で採択された条約第8条(受動喫煙の防止)履行のためのガイドラインにおいて、自国での条約発効後5年以内(日本では2010年2月27日まで)に屋内施設の100%完全禁煙を実現するための法的規制をとることが求められている。
    日本学術会議は、これらの報告書等を踏まえ、この論争について「受動喫煙は科学的根拠を持って健康障害を引き起こすことが示されて論争に終止符が打たれたといえる」との評価を行うとともに、2008年3月4日に発表した提言「脱タバコ社会の実現に向けて」において、「受動喫煙が肺がんや心筋梗塞、小児の気管支炎・肺炎や喘息の悪化、乳幼児突然死症候群などの原因となることには、十分な科学的証拠がある」、「他人の健康を害してまで喫煙する権利を喫煙者に認めるわけにはいかない」とし、職場・公共の場所での喫煙を禁止することを求めている。
    具体的には「上記のガイドラインに沿って、職場、レストランやバーを含む公共の場における屋内ならびにタクシーを含む公共交通機関での全面禁煙を明示し、罰則のある強制力を伴う法を整備する必要がある」としており、たばこ規制枠組条約の締約国として、日本がタバコ対策を強力に進めて行くことを求めている。


    対応・事例

    対応・事例
    日本では2003年5月1日に施行された健康増進法において、公共施設等の多数の人が利用する施設の管理者に受動喫煙防止義務が課せられた。
    これによりレストランや公共施設・公共交通機関での分煙ないし禁煙が進められているが、同じ空間で席を分けただけの受動喫煙防止効果の無いものまで分煙と称している飲食店なども多く、NPO法人日本禁煙学会は独自調査により先進国で最低レベルと評価している。
    各自治体レベルにおいてタクシーの禁煙化が進んでおり、2007年5月1日より名古屋市及びその周辺地域で全タクシー8050台が全面禁煙となった。
    また、2007年7月11日から神奈川県においてタクシーの全車両禁煙化がなされた。
    他の市町村においてもタクシー業界側で禁煙化を進める動きがある。
     
    受動喫煙裁判
    2004年8月5日に神奈中ハイヤーを相手に乗務員が受動喫煙に対する健康被害を受けたとして、50万円の損害賠償と全車両の禁煙を求めて訴訟。
    2006年5月9日に原告側の請求を退ける判決を下したが、判決文には「タクシーの全面禁煙化をすすめる事が望ましい」との意見が附された。
    なお、原告側は控訴を要求したが2006年10月11日に東京高等裁判所への控訴を棄却された。
    江戸川区職員が区に対して求めた、職場での受動喫煙に関する損害賠償請求訴訟。
    2004年7月13日に東京地方裁判所は同区に対し、安全配慮義務を怠ったとして5万円の支払いを命じた。
    判決では被用者(職員)がたばこの煙から保護されることを安全配慮義務の内容として認めた。
    北海道滝川市の建設資材製造会社「道央建鉄」に勤務していた男性が職場での受動喫煙の被害を受け、急性受動喫煙症となった。
    男性が会社に分煙など改善要求を行ったところ、男性が解雇された。
    それを不服として、2008年1月24日に解雇の無効確認と給与の支払いを求める訴えを札幌地裁岩見沢支部に起こした。
    「道央建鉄」側は「社長を含め社員の大半は喫煙者であり、分煙を行うための費用が掛かるために男性を解雇した」と述べた。
    2009年4月1日に700万円を道央建鉄が男性に支払うことで和解したと発表した。


    科学的知見及び声明・見解
    受動喫煙に関する科学的知見及び声明・見解
    環境中たばこ煙(ETS)の成分
    副流煙は、煙草の発火点から直接立ち上ることによる温度の差から、主流煙の数倍ないしそれ以上の有害物質を含んでおり、非常に危険であると警告されている。
    米国環境保護局(EPA)は、環境たばこ煙をAクラスの発癌性物質に分類している。
    タバコ会社自身による実験においても、種々の発癌性物質の濃度が、主流煙よりも副流煙において高いことが示されている。
     
    ETSによる発癌のメカニズム
    環境たばこ煙成分をマウスの皮膚に塗ったりラットの肺に移植することで、またハムスターに煙を吸入させることで、癌の発生が観察された。
    これらや他の研究など、動物実験では環境たばこ煙が癌を発生させると言える十分なデータが出されている(など)。
    環境たばこ煙は、ニコチン、ナフチルアミン、ニトロソアミン、ベンゼン、アンモニア、ホルムアルデヒド、ベンツピレン、一酸化炭素、鉛、ポロニウムなど約4000種類の化学物質を含み、うち69種類は発癌物質と同定されている。
    その他に、多量の微粒子を含んでいる。
    環境たばこ煙中の発癌物質は、細胞中のDNAやアルブミンと結合する。
    それらタバコ固有の発癌物質の代謝物が、例えば 4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone/NNK について、環境たばこ煙にさらされた非喫煙者の尿中に増加していることが少なくとも5つの研究(など)で示された。
    受動喫煙していない肺癌女性と比べ、受動喫煙していた肺癌女性では、グルタチオンS-トランスフェラーゼM1遺伝子において多形が有意に増加していることがわかった。
    (グルタチオンS-トランスフェラーゼM1は、環境たばこ煙中の発癌物質の解毒作用を持つと考えられており、その活性を下げる変異は、癌発生を促進しうることになる) これらのことから、発癌物質が受動喫煙によって吸引され、人体細胞のDNAが変異を起こし、発癌に至るとされている。
       

    ETS及び受動喫煙に関する声明
    ETS及び受動喫煙に関する声明
    国内
    日本公衆衛生学会
    2000年7月、「たばこのない社会の実現に向けて」を発表。
    その後、2002年5月「たばこのない社会の実現に向けてさらに前進を」、2003年10月「たばこのない社会の実現に向けた行動宣言」を続けて発表。
    受動喫煙の害の周知に努め、学校などの施設の無煙化を目指す、などと宣言した。
    日本肺癌学会
    2000年11月2日、東京で行われた第41回日本肺癌学会総会において、「禁煙宣言」がなされた。
    その中で同学会は、「喫煙は最も大きい肺癌の原因」と判断するため、「反タバコキャンペーンを実施」し、「受動喫煙の害を排除するために職場、公共の場所に喫煙場所の設置を働きかける」としている。
    日本ヘルスケア歯科研究会
    「禁煙宣言」は、2001年の第3回評議員会において採択、10月21日の秋季学術講演会において承認された。
    その中で同研究会は、「すべての患者に対して喫煙・受動喫煙の有害作用を指導」することとしている。
    日本循環器学会
    2002年4月25日に日本循環器学会は「禁煙宣言」を発表。
    喫煙は喫煙者本人のみならず、受動喫煙によって非喫煙者にも冠動脈疾患や脳卒中を発症させるとして、すべての国民の禁煙ならびに受動喫煙防止を推進する活動が望まれると声明した。
    日本気管支学会(現・日本呼吸器内視鏡学会)
    2002年の第25回日本気管支学会総会において、「禁煙活動宣言」がなされた。
    その中で同学会は、「喫煙およびそれに起因する各種気道及び肺の損傷は、…肺がん、慢性気管支炎、肺線維症、肺気腫、気管支喘息等の発現や進行に対して、重要な原因の一つとなっていることは明らか」とし、「公共交通機関に関して、構内でのタバコの販売の中止、駅構内・車両の全面禁煙化」などを要望している。
    日本口腔衛生学会
    2002年9月、禁煙宣言「たばこのない世界を目指して」を発表。
    受動喫煙の害の周知に努め、学校などの施設の無煙化を目指す、などと宣言した。
    日本癌学会
    2003年9月27日、「禁煙宣言」を発表。
    学会員のみならず、関連機関・一般国民に対しても呼びかけを行った。
    数回の改訂を経て、「あらゆる機会を捉えて喫煙の害を説き、禁煙を呼びかける」「受動喫煙による非喫煙者の健康への影響を防止する対策を推進する」などと謳っている。
    日本口腔外科学会
    2003年10月23日に「禁煙推進宣言」を発表。
    受動喫煙によって種々の障害を発症するという研究結果が報告されていること等を踏まえ、種々の受動喫煙による健康被害から非喫煙者を守る旨の宣言を行っている。
    日本癌治療学会
    2005年11月14日、「日本癌治療学会 禁煙宣言」を発表。
    「禁煙は、癌予防における最も有効な方法のひとつとして科学的根拠が確立している」とし、「全ての国民に対し、あらゆる機会に受動喫煙を含む喫煙の健康に対する悪影響を分かりやすく説明し周知する」ことを学会員に要望するなどしている。
    日本呼吸器学会
    2006年11月17日に「受動喫煙と肺ガンの関連についての声明」の中で、受動喫煙と肺ガンの関係について科学的証拠に基づく情報を一般の人々に伝える声明を行っている。

    人妻
    海外
    2001年5月31日ジュネーブにおいて、WHO事務局長グロ・ハーレム・ブルントラント博士は「受動喫煙が癌、呼吸器疾患、心疾患、などの原因になることは明らかです。
    受動喫煙は喘息、子供の呼吸器疾患、乳幼児突然死症候群、中耳炎など様々な小児科疾患の原因になることも明らかです。
    科学者は受動喫煙には許容範囲(安全なレベル)が存在しないと断言します」と声明するとともに、たばこ産業による受動喫煙対策への妨害について批判を行っている。
     
    ETS及び受動喫煙に関する報告・論文
    (単独研究)1981年に平山雄により、受動喫煙と肺癌による死亡の関連を示す論文が発表された(いわゆる平山論文)。
    (単独研究)1998年のIARCの疫学調査では74歳までの肺癌と関連疾患者650人の患者に対して受動喫煙の聞き取り調査を行った。
    欧州7カ国12施設での患者たちは生涯400本以上喫煙をしたことが無い者が選ばれ、調査が行われた。
    結論として幼年期に於けるETSでの肺癌に掛かる危険性を見出せなかった、との報告が行われている。
    15年以上の期間が開いた患者たちには有意性が認められなかったとの論文が発表されている。
    2000年4月8日付けランセット(The Lancet)の出版物の中で、カリフォルニア大学サンフランシスコの研究者達がフィリップ・モリス社及び他のたばこ会社の内部資料を検証した結果、たばこ産業側がメディアにデマを流す(受動喫煙に関する誤謬報道事件)など、論文の解釈に混乱と論争を引き起こすよう画策し、IARCの受動喫煙についての調査研究を妨害していた旨の報告を行っている。
    2000年8月2日にWHOたばこ産業文書に関する専門家委員会は、アメリカにおけるたばこ産業に対する訴訟において、たばこ会社の秘密文書が公開された結果、たばこ業界が秘密裏に資金を提供している、学会もどき、世論形成団体、ビジネス団体等を通じ、WHOのタバコ規制に対する妨害工作を行っていたこと、その活動が、たばこ産業界と陰で資金的につながりのある国際的な科学者達に強く依存していた旨を報告している。
    (研究総括報告)2002年IARCは「受動喫煙は人に肺癌を起こすと結論づける十分な証拠がある」と報告した。
    (研究総括報告)カリフォルニア州環境保護庁はETSは毒性を持つ空気汚染因子と報告した。
    (単独研究)2003年UCLAの研究者James E Enstromとニューヨーク州立大学ストーニーブルック校Geoffrey C Kabat準教授による論文が、英医学誌BMJに掲載された(これより以前に、同研究は統計上の瑕疵のため、別の学術誌への論文掲載を却下されている)。
    1959年末に米国がん学会のがん予防研究対象者で1998年まで追跡調査を行った成人118094人を対象とし、特に研究対象の中で喫煙者の配偶者を持つ非喫煙者65561人を焦点をあて、冠状動脈性心臓病・肺癌・慢性閉塞性肺疾患による調査をした疫学研究。
    調査期間は39年間にわたる長期のコホート研究である。
    結果として軽微な影響はあるもののETSとたばこに関連する死亡率の因果関係を示していない。
    ETS曝露による虚血性疾患・肺癌との関連性は一般に考えられているより小さいかもしれないとの論文が発表されている。
    この論文を1面記事で伝えたガーディアン紙など英各紙は、Enstrom氏がたばこ会社から研究資金を受けていることを指摘し、「この論文は無害性を強調し過ぎているきらいがある」とする英国の専門家のコメントを紹介している。
    なお、この研究の利害からの中立性や、研究そのものの科学的な妥当性に関しては、米国ガン協会(ACS)のものをはじめとした批判が発表当初から存在した。
    そして2006年に同論文は、連邦裁判所から「大衆を欺く目的で科学に操作を加えた詐欺行為」とされた。
    詳細は「エンストローム論文」を参照 (研究総括報告)2006年米国公衆衛生局長官年次報告で「受動喫煙は小児および成人において、疾病や早死を起こす」と報告した。
    (単独研究)2007年の米国神経学会(AAN)の年次集会において、米カリフォルニア大学バークレー校統計学のThaddeus Haight氏が受動喫煙がアルツハイマー病などの認知症リスクを高めると報告した。
    長期の心血管健康調査に登録した約3,600人のデータを評価し、心血管疾患も認知症も認めない985人の喫煙未経験者と、受動喫煙に平均28年間曝露された495人とを比較した。
    6年間の追跡調査の結果、受動喫煙に30年以上曝露された高齢者が認知症になる可能性は曝露のない人に比べ、約30%高く、心血管疾患を有する人が受動喫煙に長期間曝露された場合には、認知症リスクがほぼ2倍に増大した。
    このほか、心血管疾患と診断されていなくとも、頸動脈に狭窄などの異常が認められ、受動喫煙に曝露された人の認知症リスクは、どちらもない人の2.5倍になることも示された。
    (単独研究)2007年9月4日、欧州心臓学会議において、2004年3月に世界で初めて職場での禁煙制度を全国的に導入したアイルランドでは、同制度導入後の1年間で、心臓発作の件数が約1割減少したことについて、コーク大学病院の研究チームが発表がしている。
    エドモンド・クローニンが率いる同チームは、同国南西部の公立病院に心臓発作で入院した患者数を調査。
    禁煙制度導入後の1年で11%減ったことが明らかになったとしている。

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